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◆想定読了時間: 約 11分 ・リニューアブルナフサの基本概念がわかる |
ナフサは、石油を蒸留して得られる石油製品の一種です。ナフサを高温で熱分解することで、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの基礎化学品が作られます。そして、これらの基礎化学品は、「プラスチックの原料」などとして活用されています。
昨今、このナフサは、石油からではなく、廃食油、植物由来などのバイオマス、または、回収した廃プラスチックといった再生可能な原料からも製造されています。この原料転換より得られるナフサは、「リニューアブルナフサ」と呼ばれています。
本記事では、「リニューアブルナフサ」とは何か、その原料や製法、環境負荷低減への寄与に関して説明します。
リニューアブルナフサは原料によって、「バイオナフサ」、「バイオサーキュラーナフサ」、「サーキュラーナフサ」の3種類に大きく分類されます。これは、ISCC(International Sustainability & Carbon Certification:国際持続可能性カーボン認証)という国際的な第三者認証機関が運営するISCC PLUS認証(※1)の原料定義に基づいた分類です。
代表的な原料はパーム油、菜種油などの植物性油です。植物性油は、SAF(持続可能な航空燃料:Sustainable Aviation Fuelの略)やHVO(水素化処理植物油:Hydrotreated Vegetable Oil)を製造する際の原料として使用されており、それらの製造過程で副産物として、バイオナフサが生成されます。
代表的な原料は使用済の食用油(Used Cooking Oil; UCO)です。UCOもSAFやHVOの製造する際の原料として使用され、それらの製造過程で副産物としてバイオサーキュラーナフサが生成されます。
代表的な原料は工場や家庭から排出される廃プラスチックです。これらの廃プラスチックは回収後、熱分解などの工程を経てサーキュラーナフサに再生されます。
ISCC PLUS認証で定められている、分類ごとの代表的な原料を以下に示します。

ISCC PLUSの定義によれば、「バイオ」原料はトウモロコシ、サトウキビ、菜種など農業、林業、漁業、養殖業などの産業から生み出される製品の生分解性物質を指すものと規定されます。「バイオナフサ」とは、それらを原料として製造された炭素と水素からなる化合物です。
上記にて、バイオナフサの代表的な原料としてパーム油を挙げましたが、他にも大豆油、菜種油などの植物性油などがあります。
それらの植物は、成長過程で二酸化炭素を吸収します。そのため、バイオナフサを使用した製品を燃やした場合に発生する二酸化炭素は、植物成長に伴う二酸化炭素吸収量と同等と考えられます。
2)コスト
バイオマスを原料としたナフサのコストは、従来の石油を原料としたナフサと比べ高くなります。石油は産油国で集中的に且つ大量に採掘されるのに対し、バイオマスは天候などの環境影響の影響を大きく受け、且つ、生産地が一部の地域に限定されるため、大量生産が難しいためです。また、石油からナフサを製造する工程に比べ、バイオマスからナフサを製造する工程はまだ技術が発展途上であり、コストが割高となります。
ISCC PLUSの定義によれば、「バイオサーキュラー」は、農林業および漁業・養殖業を含む関連産業からの生物由来の廃棄物および残渣、並びに産業廃棄物および一般廃棄物の生分解性成分(食品廃棄物、トール油、林業残渣など)です。それらを原料して製造されたナフサのことを、「バイオサーキュラーナフサ」と呼びます。
バイオサーキュラーナフサの代表的な原料である廃食油(UCO)とは、飲食店などで使用済みとなった大豆油、菜種油やラードなどの食用油です。よって、日本国内の廃食油を回収して原料とすることで資源のリサイクルや原料国産化の検討も可能です。また、もう一つの代表的な原料はトール油です。トール油は、松材を原料としてパルプを製造する時に副生物として生じる脂肪酸や樹脂を主成分とする油です。この様な廃棄物由来の非化石原料を使用することは二酸化炭素の排出量の削減にもつながります。
バイオサーキュラーナフサの主な原料である廃食油は、日本では90%以上が専門業者により回収されています。具体的には、全国500以上の市町村において、いろいろな仕組みで廃食油の回収と再生が実施されています。例えば、札幌市では廃食油の資源化業者が、スーパーマーケットやホームセンターなどの約400か所で家庭から排出された廃食油を無料回収しています。
また、海外でも廃食油の回収は盛んにおこなわれています。例えば、マレーシアの首都クアラルンプールでは、ショッピングセンターのフードコートで廃食油の回収を実施しています。ここで回収された廃食油は、石油元売り業者へ販売されSAF(持続可能な航空燃料)などに原料に戻されます。

1)原料の確保
日本ではもともと廃食油は産業廃棄物として回収・処理されており、配合飼料や工業用途などで再利用されてきました。しかしながら、昨今はSAFなどの原料として世界で注目が集まり始め、日本で回収された廃食油の海外輸出が急増するなど、世界中で廃食油の取り合いが起きています。
2)コスト
前述の通り、廃食油がSAFなどの原料として脚光を浴びるに従い、その価格も大きく上昇しております。海外での廃食油の市況が上昇するに伴い、日本国内の取引価格も上昇し、2020年ごろまでは1キロ当たり50円ほどであった価格も今では2~3倍ほどまで上昇しており、バイオサーキュラーナフサのコストも影響を受けると考えられます。
3)トレーサビリティ
廃食油の需要やコストが上昇するにつれて、一部の地域では、低品位な廃食油が市場に出回り、また、未使用の油が使用済みの廃食油と偽って販売されている懸念が生じるなどの事態が発生しております。品質が保証され、且つ、持続可能性がある原料であることを担保するトレーサビリティの確保が重要な課題でもあります。
バイオナフサとバイオサーキュラーナフサはSAFやディーゼル油を製造する際の副生物として製造されますが、その代表的な製造プロセスを3つ紹介します。
HEFAは、廃食油、植物油、動物油などの脂肪酸エステルを、水素と反応させる水素化処理を行って飽和炭化水素を生成し、それらを最終的に蒸留・分別する製造方法です。この製法でSAF等を生産する際、バイオ/バイオサーキュラーナフサが副生されます。HEFAは比較的成熟した技術であり、既存の燃料生産設備の改修によって導入検討できるため、実用化が進んでいます。

FT法は、一酸化炭素と水素を触媒による反応によって、炭化水素に変換する技術で、1920年代に石炭から燃料などを製造するためにドイツで開発されました。この方法は、都市ごみや廃木材、バイオマスなどの原料から、合成ガス(一酸化炭素と水素の混合物)を生成し、SAFなどの燃料を製造する際に使用されており、この製造工程でバイオ/バイオサーキュラーナフサが副生されます。

ATJは、主にサトウキビやトウモロコシなどの可食バイオマスや、パルプやチップなどの非可食バイオマスを原料としたエタノールを、脱水してエチレンに転換し、そのエチレンをオリゴマー化(※2)・水素化反応をさせてSAFを製造するプロセスです。この製造過程で、バイオ/バイオサーキュラーナフサが副生されます。

共処理は、従来の石油精製設備内で、石油と、水素化処理した植物油(廃食用油)や廃プラスチック熱分解油を同時に処理し、従来品と同品質の化学品や燃料を製造する手法です。この手法のメリットは、既存設備を活用することで設備投資を抑えて、原料転換を短期間でスタートできることです。

廃プラスチック等を原料としたサーキュラーナフサは、熱分解と呼ばれるプロセスにより製造されます。
熱分解プロセスとは、廃プラスチックを無酸素状態で高温熱分解させて、サーキュラーナフサに分留させるプロセスです。廃プラスチックの中に混入する金属などのプラスチック以外の不純物を除去し、処理しやすい形状やサイズにまで破砕・成型化する前処理も重要な工程です。昨今では、触媒による熱分解や超臨界条件で廃プラスチックを油化する技術や、マイクロ波による加熱で分解する技術など、様々な方法が検討されております。

リニューアブルナフサを使用したプラスチックは、以下のような環境低減効果を発揮します。
バイオマスなどの再生可能な資源の活用により石油などの化石資源の使用量を削減するとともに、バイオマスが成長過程で二酸化炭素を吸収する性質を持つことからGHGの排出量の削減に貢献します。カーボンニュートラルに向けた持続可能な社会の実現を支援します。
バイオサーキュラーに使用される廃食油は、①のバイオと同様に、原料であるパーム油などのバイオマスが成長する過程で出る二酸化炭素を吸収します。また、廃食油が焼却処分されるのを回避することで、焼却時に発生する二酸化炭素の排出量も削減が可能です。そのため、地球温暖化の防止に貢献することができます。
現在焼却処分されている廃プラスチックを熱分解などの技術を活用してサーキュラーナフサ(熱分解油)として再利用することで、廃プラスチックが焼却される際に発生する二酸化炭素の排出回避と、廃棄物排出量の削減にも貢献することができます。
・ リニューアブルナフサは、バイオマス原料から製造される「バイオナフサ」、廃食油などの原料から製造される「バイオサーキュラーナフサ」、廃プラスチックなどの原料から製造される「サーキュラーナフサ」の3つの種類があります。
・リニューアブルナフサの主な製法は、SAFの副産物としての製法(HEFA、FT法、AtoJ)、従来の石油精製設備内で、石油と水素化処理した植物油などを同時に処理し、従来品と同品質の化学品や燃料を製造する共処理(Co-processing)、廃プラスチック等の熱分解法です。
・ リニューアブルナフサは、二酸化炭素の排出量削減や資源の有効利用・循環に貢献することが期待されています。
リニューアブルナフサを原料とすることには課題もありますが、環境負荷低減に貢献することができることに加えて、既存の設備を活用できるため比較的短期間で原料転換し、お客様に持続可能な環境価値を持つポリオレフィンなどの製品をご提供できることが可能となります。
※1 ISCC PLUS認証:持続可能性および炭素に関する国際認証で、全世界で販売されるバイオマス原料やリサイクル原料などのサステナブルな原料を使用した持続可能な中間材や製品について、サプライチェーン上で管理・担保するもの。この認証ではマスバランス方式の適用が認められている。
※2 オリゴマー化:分子量の小さい物質からより分子量の大きい物質を製造するための反応です。ATJプロセスにおいては、エチレンはより炭素数の多い炭化水素SAFへと変換されます。
住友化学でも千葉工場でISCC PLUS認証を取得して、リニューアブルナフサの活用検討を本格化させております。詳細情報は、以下関連サイトをご参照ください。
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