「新たな石油資源を使うのではなく、今あるプラスチックを循環させていこう」という思いが出発点

 プラスチックはさまざまな用途に用いられ、人々の生活を支える有用な素材です。

一方で、限りある石油資源の消費や、プラスチック廃棄量の増大などが社会課題となっています。

こうした社会課題を受けて当社は、「将来を見据え、次世代により良い環境を残していこう」という視点から、プラスチックの資源循環に取り組むことを決めました。

根幹にあるのは、当社の基本的精神となっている「自利利他公私一如」です。

環境に対する配慮をしながらビジネスを発展させていくという考えは、100年以上前の創業時から脈々と受け継がれています。

 

 具体的な取り組みの一つとして、新たな化石燃料を消費する生産方式とは別の道を探究し、環境負荷低減に資するポリオレフィンを製造するプロジェクトを立ち上げました。

 

それがエタノール由来ポリオレフィンのプロジェクトです。

 

プロジェクトでは、これまで廃棄・焼却していたプラスチックを再利用することで、サーキュラーエコノミーの取り組みを推進します。

また、CO2の排出量削減によって、カーボンニュートラルな社会の実現を目指します。

環境に配慮したプラスチックの原料とは?探し求めた先で出会ったパートナーとの協業

 プロジェクトの最初の課題は、原料探しでした。当社にはポリオレフィンの製造に関する技術とノウハウが蓄積されています。

そのため、環境に配慮した原料を見つければ、その原料を使ってポリオレフィンの製造方法を検討できるからです。

 

 さまざまな原料を調査していく中で出会ったのが、積水化学様の“ごみ”由来エタノールでした。

積水化学様は、当社と同じように環境負荷低減への取り組みを進め、廃棄物や廃プラスチックをエタノールに変換する技術の開発に成功していました。

このエタノールを原料として使うために新たな技術を導入し、従来のナフサを出発原料としたものとは異なるプロセスでポリオレフィンを作るというプロジェクトが始動。

積水化学様と2社で連携しながら事業化に向けた検討を進めています。

 

 積水化学様と環境負荷低減に関して協業するのは初めてですが、住化積水フィルム株式会社など、他の分野においては一緒に事業を行ってきた実績があり、協力し合う土壌ができていたため、2社の強みを活かしたこのプロジェクトも事業化に向けてスムーズに進んでいます。

GHG削減まで視野を広げ、バイオエタノールなどの多様な出発原料にも着目

 積水化学様の“ごみ”由来エタノールからポリオレフィンを作るのと並行して、異なるアプローチにも挑戦しています。

温室効果ガス(GHG)の削減という大きなテーマまで視野を広げれば、バイオエタノールも原料として有用ではないかと考え、新たな検討が始まりました。

 

 バイオエタノールは、使われる原料によって「第一世代」と「第二世代」に分類されています。

とうもろこしやサトウキビなど、食用作物から生産されるのが第一世代のバイオエタノールです。

第二世代のバイオエタノールは食料と競合しない、木や草などから生産されます。

バイオエタノールのメリットは、大気中のCO2を光合成により吸収して成長した植物から作られるため、カーボンニュートラルに貢献できることです。

 

 当社ではこうしたバイオエタノールも含めて、多様なエタノールをポリオレフィンの出発原料として検討しており、原料転換によってポリオレフィンを環境負荷低減型に切り替えていくための研究を進めています。

 

 2022年4月にはエチレン試験製造設備を千葉県市原市に新設し、エタノール由来ポリオレフィンの事業化に向けた技術検証がスタートしました。

すでにサンプル提供を開始し、事業化に向けた検討を加速しております。

住友化学のエタノール由来ポリオレフィンが実現できること

 当社のエタノール由来ポリオレフィンは、ナフサ等の石油資源ではなく、“ごみ”由来エタノールやバイオエタノールを出発原料とするため、石油資源の使用量を削減できます。

さらに、廃プラスチックを再生プラスチックに生まれ変わらせることで、焼却・埋め立て処分されるプラスチックの量を削減。あるいは、バイオエタノールからプラスチックを製造することで、GHG排出量の削減に寄与します。

 

 また、従来の石油由来製品と同等品質のポリオレフィンであるため、お客様には従来品と同じ方法で使用していただくことが可能です。

使い方はそのままで、代替するだけで環境負荷低減に貢献することができるのです。

 

 このエタノール由来ポリオレフィンがどのように活用されようとしているのか、事例をご紹介します。

事例紹介:資生堂様・積水化学様との3社協業で目指すサーキュラーエコノミーとは?

3社で取り組む、プラスチック製化粧品容器の新たな循環モデル構築

 当社が資生堂様・積水化学様と協働で取り組んでいるのは、プラスチック製化粧品容器の回収から再生までの新たな仕組みの構築です。

このプロジェクトは、サステナブルなプラスチック容器の実現を目指す資生堂様の取り組みと、積水化学様の“ごみ”由来エタノール、当社のエタノール由来ポリオレフィンの取り組みが、サーキュラーエコノミーへの移行に向けて合致したことで生まれました。

 資源循環モデルでは、資生堂様が使用済み化粧品容器を回収するスキームを構築し、回収された化粧品容器を積水化学様がエタノールに変換します。

当社はそのエタノールを原料としてポリオレフィンを製造します。

そして、資生堂様がエタノール由来ポリオレフィンを再び化粧品容器に資源として活用することで、循環が完成します。

一般消費者や他企業も巻き込みながら目指すサーキュラーエコノミー

 BtoB企業の積水化学様と当社に加えて、BtoC企業である資生堂様とも連携することで、一般消費者の方々への直接的なアプローチが可能になりました。

ただし、一般消費者をターゲットとするプロジェクトには難しさもあります。

化粧品容器を回収するには、これまで捨てていたものを店舗まで持ってきてもらわなくてはなりません。

環境に配慮した取り組みへの思いを社会に訴えかけて、行動変容を促していく必要があります。

 

 日常生活に密着している化粧品容器を再利用することは、目に見える形での資源循環であり、一般消費者の方々の理解を得やすいのがポイントです。

限りある資源を捨てずに循環させるには、一人ひとりの心がけや行動が必要だということを意識してもらうきっかけにしたいと考えています。

また、循環モデル構築の取り組みは3社に限定するものではないため、関連業界や企業にも参加を働きかけて、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。

 

 ここでご紹介したように、環境負荷低減の取り組みを成果に結びつけるためには、業種・業界の垣根を越えた幅広い企業・団体とのパートナーシップも重要です。

当社は現在の取り組みにとどまることなく、他企業や他団体とも新たなパートナーシップを築きたいというメッセージを発信し続けていきます。

お客様の環境負荷削減に貢献するエタノール由来ポリオレフィン

 ここまで、当社が取り組むエタノール由来ポリオレフィンのプロジェクトについてお伝えしてきました。

 

 当社のエタノール由来ポリオレフィンは、従来の石油由来ポリオレフィンと同等の品質でご提供できるため、プラスチックの有用性を損ないません。

ナフサ等の石油資源を出発原料としないため、お客様は従来品に代えてエタノール由来ポリオレフィンを使うだけで石油資源の使用量を減らし、GHG排出量や廃プラスチックの削減に貢献できます。

 

 プロジェクトはこれからが本番。

 

事業化に向け、着実に歩みを進めています。

 

当社と一緒に、循環型社会の実現に向けた取り組みを始めませんか。

 

エタノール由来ポリオレフィンの詳細資料やサンプルのご提供に関しては、以下のフォームからお問い合わせください。