1. 製造工程で発生した使用済みPMMAをマテリアルサイクルし、再生プラとして事業化した経緯

出典:住化アクリル販売
 

住化アクリル販売が開発した「SAS Meguri」は、PMMA製品の製造時に発生する廃材を回収・選別・粉砕し、マテリアルリサイクルによって再生させた製品です。リサイクル材でありながら、光の拡散性などの光学特性において優れた特性を有しています。製造時にはリサイクル材を51%以上使用し、二酸化炭素排出量を従来比40%削減しており、環境負荷低減に貢献しながら、PMMAシートの特性を生かした環境配慮型製品です。

 

使用済みPMMAをマテリアルリサイクルによってPMMAシートとして再生させる際の課題(苦労話)やその解決方法について、掘り下げます。

 

―なぜ使用済みPMMAリサイクルシステム開発に着手することを決めたのでしょうか?

渡辺部長:

循環型社会の実現向けて重要とされる「3R(Reduce, Reuse, Recycle)」「5R(Refuse, Reduce, Reuse, Repair, Recycle)」の一つであるリサイクルについて、住化アクリル販売の親会社である住友化学は、これまで培ったリサイクル技術を活用して製造するプラスチック製品の総合ブランド「Meguri」を立ち上げ、積極的に取り組んでいます。住友化学では、MMA事業部がケミカルリサイクル技術の事業化を推進しており、当初、住化アクリル販売はケミカルリサイクルに使用する原料(使用済みのPMMAシートなど)の調達支援を担当していました。

 

原料供給元の調査やサンプル調達を進める中で、マテリアルリサイクル技術を適用することでリサイクル可能な原料の存在を知り、いち早く販売できるのではないかと考えたのです。

 

ケミカルリサイクルは、品質の悪い廃プラスチックでもリサイクルを検討できますが、マテリアルリサイクルと比べて、より多くのエネルギーやコストがかかります。よって、PMMAの製造工程で発生し選別された、比較的品質の良い廃材であればケミカルリサイクルではなく、マテリアルリサイクル技術にてリサイクルをすることが適切と判断しました。

 

そこで、住友化学のPMMA事業の大きな一つのテーマとしてマテリアルリサイクルをスタートさせました。

 

―製造工程で廃棄されるPMMAにおけるリサイクルプラスチックの課題とは何でしょうか?

大橋:

マテリアルリサイクルにおける最大の課題は、原料として使用する廃プラスチックの品質管理だと考えています。廃プラスチックの品質を特定するためには、元の品番を知ることが不可欠です。これは、自社製品の品質を保証することに直結します。さらに、回収した原料のトレーサビリティ(生産社名、生産日、生産方法などの履歴情報)を確認できることも重要な要素です。この点は、今後の販売拡大における課題でもあります。

 

具体的には、射出成形などで製造したPMMAの端材などを回収し、シート(板材)として再生産する方式を採用しています。その際、元の品種や品番の確認、つまり回収先のトレーサビリティが重要になります。

 

渡辺部長:

PMMAシートに異物が混入すると取り除くことは難しく、販売ができません。そのため、製造工程における品質管理の徹底が不可欠です。

 

リサイクル製品であっても、お客さまに販売する際には品質保証が必要であり、そのため異物や異樹脂が混入しないよう、回収原料の品質管理に細心の注意を払っています。

 

住化アクリル販売では、上記の品質管理を徹底できるリサイクラー(プラスチック回収業者)と契約し、リサイクル原料を提供いただいています。同時に、事業として安定的に、決められた数量を定期的に供給いただくことが重要です。例えば、「今月は供給できるが、翌月は供給できない」といった供給不安は、ビジネス上、どうしても避けなければなりません。

 

つまり、リサイクル原料は供給量の不安がなく、メーカーの品質保証があるバージン原料ではないため、安定供給や徹底した品質管理など、万全な生産体制を整えた上で商品化しなければならないと考えています。
 

 

ーマテリアルリサイクルPMMA「SAS Meguri」を製造する際の苦労話をお聞かせいただけますか?また、その課題の解決法はどのようなものでしょうか?

渡辺部長:

リサイクラーの選定には苦労しました。複数社にお声掛けし、使用済みPMMAの品質検査を実施しました。その結果、同じような発生元であっても、リサイクラーにより選別する機械や工程のほか、管理レベルが異なるため、異物混入の程度に違いがあることが分かりました。また、リサイクラーによる品質保証を受けた使用済みPMMAであっても、異物や異樹脂が混入しているケースもありました。

 

そのため、現在のリサイクラーを選定するまでに、調達ルートの確認のほか、どのような品質検査をしているか、要望したレベルを維持できているのか、何度も足を運んで目合わせし、お互いに納得するまで議論を重ねるなど、多くの時間と労力を費やしました。

 

―異物や異樹脂の混入について詳しく教えてください。それらの管理もリサイクラー選定の大きな要素だったのでしょうか?

渡辺部長:

はい、そうです。異物混入について、原料となるリサイクルPMMAは800kg~1トン単位のフレコン(樹脂袋)で納入されるのですが、状態は様々でした。例えば、PMMA自体の品質に全く問題がなくとも、フレコンがホコリだらけの状態で工場に納入される場合があり、付着していたホコリが原料となるPMMAに混入し、製造現場に負担をかけることもありました。

 

リサイクル品であってもフレコンは適切に管理・保管の上、きちんと清掃し、納入いただくように、リサイクラーにお願いする必要がありました。しかし、リサイクラーにそれらをお願いすると、手間とコストが掛かるため、断られるケースもありました。

 

次に、異樹脂混入について、例えば、原料のPMMAにポリカーボネートが混入しているフレコンもありました。また、透明な廃プラスチックを要望していたのにもかかわらず、色の付いた廃プラスチックが混入していたこともありました。

 

こういった様々な検討結果を踏まえて、複数社の中から品質を重視する当社の要望に対応していただけるリサイクラーを選定して協力体制を確立しています。
当社はこれらの現場経験を通じて、リサイクル事業における様々な管理課題や品質課題を実体験として学び、それらの解決ノウハウを「強み」にできていると考えています。

 

―マテリアルリサイクルPMMAシート「SAS Meguri」を様々なお客さまへマーケティングし、売込みを進める中での苦労話をお聞かせいただけますか?

大橋:

お客さまは「リサイクル品は価格が安い」というイメージをお持ちです。そのため、リサイクル品の付加価値を説明しようと試みるのですが、例えば、製造にこれほどの手間をかけていることを説明しても、コストアップを許容いただけないケースが多いです。このように、リサイクルを行う製造側と、それを購入するお客さま側との間には、リサイクル品に対する価値認識に大きなギャップがあると感じています。

 

―「SAS Meguri」において、住化アクリル販売ならではの強み、競合他社に比べた優位性はどのようなものでしょうか?

大橋:

他社との差別化として、8品種(クリア、ホワイト、ブラック、マットなど)の製品をラインナップしていることです。他社は4品種程度のため、この豊富なラインナップが当社の強みです。さらに、他社に先立ち、当社では全品種でエコマークを取得しており、製品の訴求ポイントとなっています。

 

また、 押出製法によるPMMAシートは、新潟県の委託先で生産しています。製造パートナーとの良好な連携により、市場の要求に基づいたタイムリーで柔軟な対応が可能です。試作時には、幾つかトラブルは発生しましたが、パートナー企業を主体として、時には住友化学の研究の支援を受けながら、各々の問題を早期に解決し、高品位な製品の量産を開始しました。

 

 

ここまでは、「SAS Meguri 」の開発の経緯と苦労についてお伺いしました。
後半では、コイズミ照明との共同開発に加えて、マテリアルリサイクルPMMAシートの今後のビジネス展開について、お伺いします。

記事をもっとよく理解するための情報

この記事以外にも炭素資源循環の実現に向けた、様々な情報を紹介しています。以下のリンクからご参照ください。

 

【関連サイトリンク】

 

【住化アクリル販売サイト】
SUMIKA ACRYL SHEET™ Meguri®

 

【ニュースリリース】
コイズミ照明とアクリル樹脂のリサイクルでコラボレーション
~「Meguri®」で新たな価値の創造へ~

 

【炭素資源循環情報リンク】

 

 

 

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2025年10月作成