2.コイズミ照明と住友化学が、過去に共同で照明器具を開発した歴史とは

出典:コイズミ照明
 

住化アクリル販売が「SAS Meguri」を開発するより前に、住友化学とコイズミ照明は、2010年から「LED導光板照明」を共同開発していました。過去に照明器具を共同開発した経験やその際に培った人脈が、今回の「SAS Meguri」の開発に生かされています。そこで今回は、照明器具開発の経緯についてお伺いしました。

 

―コイズミ照明と住友化学が、LED照明器具を共同開発するまでの経緯とは?

渡辺部長:

コイズミ照明と当社の関係は、2010年にコイズミ照明と住友化学が開始した、液晶テレビのバックライトなどに使われている導光板の照明用途への応用(LED導光板照明)での共同開発に遡ります。

 

2000年代に入り液晶テレビの普及によってPMMAの主用途となったのが、バックライト用導光板でした。当時、住友化学では導光板に関する技術的な蓄積があり、その特性を生かしてフラットパネル型照明器具の共同開発をコイズミ照明と開始しました。その開発商品が、薄型LED照明「SUMILOOK」です。

 

住友化学は、導光板の発光技術(光効率を上げる技術など)は有していましたが、照明器具として製品化するノウハウを持ち合わせていませんでした。具体的には、照明器具の技術(電圧・電流の制御技術など)が不足していました。そこでコイズミ照明とパートナーシップを構築し、互いの知見を出し合うことで、「化学技術」と「光の制御技術」を融合させた、省エネ・長寿命の薄型LED照明「SUMILOOK」を創り上げることができました。

 

―住友化学がLED照明器具を拡販する際に、苦労された点とは?

渡辺部長:

住友化学には、それまで照明器具を販売した経験がありませんでした。そこで、まずは住友化学・旧東京本社の受付ルームや、愛媛工場の展示ルームや研究棟など、住友化学グループのオフィスや工場、研究棟の改装・新築時に「SUMILOOK」を設置し、来客者への認知を試みるための販売を開始しました。

 

そのように着実に成果を積み重ねた結果、大型物件の受注にも成功しました。その大型物件に設置した薄型LED照明が、2015年には照明学会で金賞を受賞し、技術的に照明器具市場で高い評価を受けました。この金賞受賞は、コイズミ照明と住友化学がお互いに喜びを分かち合った出来事として、今でも記憶に残っています。しかし、価格面では一般的に販売されている蛍光灯型照明と比較して高額であったため、拡販には苦労しました。

 

当時、照明器具はコストを重視するお客さまが多く、2018年に「SUMILOOK」の販売を中止せざるを得ませんでした

 

 

 

3.コイズミ照明が住化アクリル販売「SUMIKA ACRYL SHEET™ Meguri®」をシーリングライトに採用した経緯他

出典:コイズミ照明
 

マテリアルリサイクルPMMAシート「SAS Meguri」品をコイズミ照明が採用する際のきっかけや、採用までの課題とは?

コイズミ照明との協業のきっかけ
渡辺部長:

2021年9月、住友化学がリサイクルブランド「Meguri」のリリースを発表した際、コイズミ照明の開発部門長より「リサイクル材料で照明用PMMAシートを製造できますか」というお問い合わせをいただきました。これがきっかけとなり、具体的な開発が始まりました。


この開発部門長は、以前「SUMILOOK」の開発にも携わっており、今回のご相談を通じてプロジェクトが動き出しました。当時、コイズミ照明では他の樹脂でもリサイクル材料の活用を検討していたため、社内にリサイクル材料に関する知見が蓄積されており、リサイクルPMMAシートを使用した照明器具の開発もスムーズに進行しました。

 

二酸化炭素排出量の削減が採用の一因
渡辺部長:

採用の最大の理由は、照明メーカーとして大量に使用するPMMAシートにおいて、「SAS Meguri」を導入することで二酸化炭素排出量を大幅に削減できる点にご注目いただいたことです。

 

「SAS Meguri」を採用するとバージン原料を使った現行品よりも価格は上がるとお伝えしていましたが、「価格が上がっても二酸化炭素の排出量を明確に削減できる」という点が大きな決め手となり、コイズミ照明様は採用を決断されました。

 

また、コイズミ照明様が「循環型社会のあかりへ」をキーワードに、人と地球環境にやさしい製品の開発・普及を通じて、循環型社会の実現を目指していることにも深く共感しています。製品の開発・製造から廃棄までの全段階で環境負荷の低減と「安全確保」「環境への配慮」を両立させる姿勢には、強い信念を感じました。

 

さらに、今回のプロジェクトには、以前から気心の知れたコイズミ照明の開発部門長が担当として関わってくださったことも、スムーズなコミュニケーションや信頼関係の構築につながり、プロジェクト推進の大きな支えとなりました。

 

現時点では、二酸化炭素排出削減を最優先して「SAS Meguri」を採用する企業はまだ多くありませんが、そのような中でコイズミ照明様の企業姿勢には大変感銘を受けています。

 

 

リサイクル樹脂利用率を51%以上にした理由とは
渡辺部長:

住化アクリル販売の「SAS Meguri」は、リサイクル材を51%以上使用し、バージン原料を使った現行品より二酸化炭素排出量を40%以上削減しています。リサイクル樹脂利用率(以下、リサイクル率)を51%以上にした理由は3つあります。

 

① エコマーク取得: リサイクル材を50%以上使用することがエコマークの取得条件であったこと

② 製品供給量の安定化: リサイクル原料の調達量が限られているため、安定的に供給可能な割合にする必要があったこと

③ 価格の設定: リサイクル率を高くするのに比例して二酸化炭素削減量は増えるが、価格も高くなる。それらを踏まえて、市場に受け入れられる価格にする必要があったこと

 

これらの最適なバランスを検討した結果、「リサイクル率51%以上」という結論に至りました。

 

リサイクル原料は調達可能量に限りがある上に、年々需要が高まっています。そのため、販売数量を先読みして、リサイクル業者から一定数量を基本的に毎月購入することで、供給ルートを確保しています。これにより、将来的な供給不安を解消し、お客さまへの安定供給を図っています。

 

―マテリアルリサイクルPMMA「SAS Meguri」品をコイズミ照明が採用後、先方のご評価は如何でしょうか? 

再生アクリル樹脂の評価結果
渡辺部長:

「SAS Meguri」採用時、リサイクル品であるにも関わらず性能が向上した点を高く評価していただき、コイズミ照明にも大変喜んでいただきました。具体的には、従来品のバージン材料に比べて、明るさ(セード効率)が7%向上しました。この輝度向上は、拡散効果の高い物質を配合したことによるものです。

 

―住化アクリル販売がコイズミ照明とコラボした効果はどのようなものでしょう?

コイズミ照明との協業による波及効果
渡辺部長:

住化アクリル販売にとって、他のお客さまへの訴求効果がありました。コイズミ照明というブランドバリューのある企業に採用されたこと、および「具体的にこのような用途で使用されています」という事例をアピールできることが強みとなっています。

 

今回採用された照明器具は、量販店などで小売りはされておらず、大手ハウスメーカーや不動産業者を通じて、一戸建てのほか、マンション、ホテルなどへ販売されています。

 

またコイズミ照明のお客さまからは、「リサイクルであることが分かりやすい商品なので、SDGsを掲げる顧客には訴求しやすい」という意見をいただいています。

 

住友化学グループ初の商品ブランド「Meguri」付き販売商品
大橋:
今回、コイズミ照明からの依頼により、「Meguri」マークをシーリングライトに付けて販売いただいています。実は、コイズミ照明のシーリングライトが、住友化学グループ全体として、最初に「Meguri」ブランドの商標を付けた商品の販売となりました。

 

コイズミ照明と住化アクリル販売の両社は、この製品を通じてブランド認知度向上を目指しています。

 

 

 

4.お客さまのご評価

―「SAS Meguri」に関して、コイズミ照明以外のお客さまのご評価はいかがでしょうか?
どのような用途、お客さまに興味を持って頂けているか、その理由もお聞かせください。

 

大橋:

お客さまにご興味をお持ちいただいている商品の代表例を2つ挙げます。

 

1.アクリルキーホルダー、スタンド(アニメ、アイドルなどキャラクターグッズ)

2.化粧品什器(デパート、ドラックストアなどの展示用架台)

 

前者はキャラクター製品であるため、キャラクターイメージを損なわぬよう「異物」などの混入がないなど高品質を求められます。後者の化粧品什器は、環境意識の高いお客さまのため、採用の可能性が高いと考えています。また、品質に加えて加工性も良く加工業者からの評価も良好です。

 

―「SAS Meguri」がエコマークを取得した狙いと、その波及効果について教えて下さい。

大橋:
環境意識の高まりもあり、世の中に浸透しているエコマークを取得した結果、お客さまからのお問い合せは着実に増えています。また、エコマークのウェブサイトにも掲載されているため、より認知されやすい製品となっています。

 

渡辺部長:
当社がエコマーク登録をしているため、「SAS Meguri」を使用した製品も簡易的な手続きでエコマーク登録が可能です。そのため、お客様のエコマーク申請の手間が削減できるメリットがあります。

 

 

 

5. 今後の展望

―お客さまに対して、今後どのような製品展開を予定していますか。

大橋:
飲料メーカー向けをはじめとする自動販売機の前面板への採用を目指しています。前面板の原料となるPMMAには、安全性に配慮して割れにくくするため、耐衝撃性能を付与する必要があります。

 

渡辺部長:
前面板は、自動販売機でボトルなどの商品が飾ってある箇所のカバーとして使用されている透明のシートです。こちらの製品を自販機メーカーや飲料メーカーなど、サスティナビリティ意識が高いメーカーに提案を開始しています。

 

―事業を拡大していく中での課題をお聞かせください。

渡辺部長:
大きな課題は価格です。様々なパートナーとの協力を得ながら何らかの工夫によってバージン材(従来の化石由来品)を使用した製品のコストに近づけることができれば、事業拡大につながると考えています。社会的な背景が変化すれば、お客さまにとって有益で扱いやすい製品になるでしょう。

 

例えば、将来的にカーボン取引が開始され、二酸化炭素の排出量を削減した企業に対して何らかのメリット(税金還付や優遇措置など)が与えられるようになれば、リサイクル市場は拡大する可能性があります。しかし現状では、そのようなメリットに対する資金拠出者がいないため、当社と同様にリサイクル品の開発を進めるメーカーはどこも苦労しています。

 

今回のようにリサイクル製品について説明すると、お客さまの反応は非常に良いのですが、まだ環境価値を支払う際の指標が確立されていないため、採用まで進展させることが難しい状況です。環境意識の高い企業ではリサイクル品の採用を積極的に進めていただけますが、一般的な企業では、価格を含めてメリットを明確に示めせない限り採用にたどり着けません。

 

このような市場環境に対して、直ちにバージン材を使った製品の価格に近付けることは困難ですが「SAS Meguri」のコスト低減の努力に加えて、さらなる高品質化やラインナップの強化などを積み重ねて、事業を通じた持続可能な社会実現への一助になればと考えています。

 

 

 

6. お客さまへのメッセージ

出典:コイズミ照明(カタログを抜粋)
 

―カーボンニュートラルの実現に向けて、今回のリサイクルシステムがどのように貢献できるとお考えでしょうか?

二酸化炭素の排出削減量は、製品1kgあたり▲2.1kg
大橋:

マテリアルリサイクルPMMAシート「SAS Meguri」は、ご使用時の二酸化炭素の排出削減量を容易に算出できることが特徴です。さらに、製造工程における廃棄物、二酸化炭素排出量の削減にも貢献しています。

 

具体的には、PMMAシートをバージン材で製造する場合、製品1kgあたり5.4kgの二酸化炭素を排出しますが、「SAS Meguri」の場合は製品1kgあたり3.3kgの排出量に抑えられます。したがって、マテリアルリサイクル品に切り替えることで、製品1kgあたり▲2.1kgの削減効果が得られます。

 

渡辺部長:

コイズミ照明の場合、シーリングライトの年間売上実績(20万台)から算定し、年間260トンの二酸化炭素を削減出来ることを商品カタログで公表しています。コイズミ照明の営業担当の方は、このカタログに記載された二酸化炭素削減量を活用して拡販活動を展開されていると聞いています。

 

当社でも、他のお客さまに対しても、同様に「リサイクル品は製品1kgあたり▲2.1kgの二酸化炭素を削減できる」という点を説明することで、営業活動を進めています。

 

着実に成果を重ねて早期に年間100㌧の販売を目指す
大橋:

現在、新規のお客さまからの引き合いは増加しています。2025年度の売上予測では、照明器具向けで2024年度と比較して30%以上の増加を見込んでおり、安定した生産体制を構築して取りこぼしをなくし、自動販売機向け前面板への採用などにより、早い段階で年間100㌧以上の販売を目指します。

 

―これから廃プラスチックのマテリアルリサイクル、および、リサイクルプラスチックの活用をご検討の方々へのメッセージをお願いできますか?

渡辺部長:

現在、プラスチック素材そのものが、環境配慮の対象から外されることがありますが、プラスチックは決して「悪者」ではなく、私たちの生活に欠かせないものです。プラスチックを使用しないことが、必ずしも「エコ」という訳ではなく、プラスチックを「工夫」することで「エコ」に貢献できることを広めていきたいです。
そのため、リサイクル材の利用を促進すべく、引き続き「SAS Meguri」の拡販に取り組んでいく所存です。

 

大橋:

このリサイクル品については、関連する製造会社や、使用済みPMMAを回収・選別するリサイクラーなどの協力がなければ成り立ちません。ご協力いただいている方々の思いも胸に、これまで以上にリサイクルビジネスを推進していきたいと考えていますので、今後ともご協力をお願いいたします。

 

インタビューを通じ、マテリアルリサイクルPMMAシート「SAS Meguri」の課題は、バージン材に対するコスト差と原料の安定的な調達先確保に伴う供給能力と感じました。また、この製品を拡販する際に必要なことは『「SAS Meguri 」ブランドの認知拡大』と理解しました。

 

今後、マテリアルリサイクルPMMAシート「SAS Meguri 」ブランドが、その付加価値(①セード効率の拡大、②二酸化炭素の削減)を認められて、いろいろな製品に付与され広がっていくことを期待します。
本記事前編では、製造工程で発生した使用済みPMMAをマテリアルサイクルし、再生プラとして事業化した経緯について伺っています。
まだご覧になっていない方は下のリンクからぜひご覧ください。

 

記事をもっとよく理解するための情報

この記事以外にも炭素資源循環の実現に向けた、様々な情報を紹介しています。以下のリンクからご参照ください。

 

【関連サイトリンク】

 

【住化アクリル販売サイト】
SUMIKA ACRYL SHEET™ Meguri®

 

【ニュースリリース】
コイズミ照明とアクリル樹脂のリサイクルでコラボレーション
~「Meguri®」で新たな価値の創造へ~

 

【炭素資源循環情報リンク】

 

 

 

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2025年10月作成