GHG(Greenhouse Gas)排出権取引とは、京都議定書第17条(※1)に定められた京都メカニズムの1つであり、排出枠などを売買する制度です。この制度においては、国や企業毎にGHG排出枠を設定(キャップ)し、その排出枠を超えた国や企業は、余った排出枠を持つ国や企業から、その排出枠を購入して超過分を相殺(オフセット)することができます。GHG排出枠を超えて排出した場合、排出枠が余った国や企業からGHG排出枠を購入(トレード)することにより平準化し、全体でGHG排出量を削減していくことを目的とする仕組みです。
排出権取引では、温室効果ガス(GHG)の排出量を減らした国や企業が、余った排出枠を売ることができます。この仕組みによって、GHG排出量を減らすことが経済的に有利になるため、環境対策と経済活動の両方が進められます。結果として、温室効果ガスの削減が促進されます。
国や企業は、GHG排出量の削減を検討する際に、排出権取引の仕組みを活用することで、「自助努力でGHG排出量を削減する」ことや「他の企業などから余った排出枠を購入する」ことなど複数の選択肢を持つことができます。これにより、最も効率的な手段を選んでGHG排出量を削減することが可能となります。
排出権取引では、排出余剰国や企業は余った排出枠を市場に流通させ、排出超過国や企業は超過分を市場から購入することができます。これにより、 GHG排出量削減に経済的なインセンティブが生み出され、排出権取引市場という新しいビジネスが創出されます。この仕組みは、社会全体のGHG排出量を減らしながら、環境保護と新たなビジネスの創出を両立させる方法として期待されています。
排出量取引市場では、需要と供給のバランスや政策変更による急激な価格変動リスクがあります。そのようなリスクを軽減するためには、適切な制度設計や対応策を検討する必要があります。
排出量取引を適切に運用するためには、排出量の削減目標と現状のギャップや成果のモニタリングが必要です。また、正確なデータ収集と審査承認が求められるため、ルール違反を防止するためのコンプライアンス体制の整備が必要です。
カーボンリーケージ(炭素リーケージ)問題は、GHG排出量の規制が厳しい国の企業が、規制の緩い国へ生産拠点を移転することで起こります。これにより、排出量削減の取組みを推進せずに生産活動を継続することで、結果的に世界全体の排出量が増加することになります。
なお、このカーボンリーケージ問題を抑制するため、炭素国境調整措置(※2)の導入が検討されています。
① GHG排出権取引とは
GHG排出権取引では、国や企業ごとに排出枠を設定し、その枠を超えたGHG排出権分を市場からクレジットを購入し相殺することで、全体でGHG排出量を削減していくことが目的の制度です。
② GHG排出権取引の課題とメリット
GHG排出権取引には、取引価格の変動リスク、削減目標とのギャップなどのモニタリングやコンプライアンス体制の整備が必要といった課題があります。また、カーボンリーケージ問題では、規制の厳しい国から緩い国への企業移転により、世界全体のGHG排出量が増加するリスクがあります。一方で、GHG排出量の削減に経済的インセンティブが生まれるため削減の促進効果が生じ、企業などは最も効率的な手段を選んでGHG排出量を削減することが可能となります。また、排出権取引市場という新しい経済市場の創出も期待されます。
【ニュースリリース】 |
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※1 京都議定書は、気候変動に関する国連気候変動枠組条約の一部であり、温室効果ガス(GHG)の排出量取引に関する取引も規定しています。この議定書は、第3回気候変動に関する国連枠組条約国際会議(COP3)で1997年12月に採択されました。
※2 厳しい気候変動対策をとる国がそうでない国に対して行う、競争上の不公平を防止するための貿易措置です。輸入品に対し炭素排出量に応じて負担を求めるもの、輸出品に対し輸出時に負担分の還付を行うものがあります。2026年からの本格適用が予定される欧州の炭素国境調整メカニズム(CBAM、Carbon Border Adjustment Mechanism)等が有名です。