1. 用語の概要

「生分解性プラスチック」とは、ある一定の条件を満たす環境下で、微生物によって最終的に二酸化炭素と水に完全に分解されるプラスチックを指し、化石資源(※1)を原料とするものとバイオマスを原料とするものがあります。植物などの再生可能な有機資源であるバイオマスから製造される「バイオマスプラスチック」と併せて「バイオプラスチック」と総称されています。バイオプラスチックは、持続可能性に優れた素材として注目されています。

 

環境省:バイオプラスチック導入ロードマップ(3頁、バイオプラスチックの定義)

2. 生分解性プラスチックの利点

環境への残留負荷軽減:

最終的に二酸化炭素と水に完全に分解されるため、従来のプラスチックに比べて、プラスチックごみによる環境への長期的な影響が少ないという特徴があります。例えば、漁具等の水産用生産資材など、意図せずに自然環境へ流出してしまうおそれがある製品を生分解性プラスチック製にした場合、最終的に微生物によって分解されることで、回収せずとも自然環境への長期的な影響を防ぐことができます。

 

廃棄物処理コストの削減:

農業用マルチフィルム(※2)など、使用後に回収し廃棄処理が必要なプラスチックフィルムを生分解性プラスチック製にした場合、使用後に耕運機で土中へすき込んで、土中で分解させることで、廃棄物処理の手間やコストを削減できます。

3. 生分解性プラスチックの課題

生分解速度の環境依存性:

生分解性プラスチックは特定の条件下でのみ効果的に分解されます。つまり、その条件に適合しない場合、意図した通りに分解されない可能性があります。また、土壌や海水中で分解されるとはいえ、そのプロセスには相応の時間を要するため、マイクロプラスチックの発生原因にもなり得ます。

 

リサイクルの難しさ:

非生分解性プラスチックに生分解性プラスチックが混入していると、生分解性プラスチックがマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの妨げとなる場合があります。

 

高い原料・製造コスト:

生分解性プラスチックの原料および製造コストは、従来の石油などを原料とするプラスチックと比較して高いことがあり、価格競争力に課題があります。

 

4. 生分解性プラスチックを活用した事例

食品包装:

ポリ乳酸(PLA)などは食品包装材料として使用され、食品の鮮度を保ちながら環境負荷を低減する素材の選択肢として広く採用されています。

 

農業資材:

ポリブチレンサクシネート(PBS)などは、使用後に畑内でそのまま生分解処理可能な農業用フィルムなどで使用され、使用済みの農業フィルムの回収・焼却が不要となることで、農作物生産プロセスの効率化と環境保全への貢献に寄与しています。

 

 

・生分解性プラスチックとは:ある一定の条件を満たす環境下で微生物によって最終的に二酸化炭素と水に完全に分解されるプラスチックを指し、原料には化石資源(※1)またはバイオマスが使用される。

 

・生分解性プラスチックの利点・課題:微生物によって分解されるため、自然環境への長期残留を防げることや、回収・廃棄処分が不要な点がメリット。一方、特定の環境条件下でのみ分解されるため、意図した通りに分解されない可能性がある。また、リサイクルの手法が確立されておらず、リサイクル可能なプラスチックに混入した場合、そのリサイクルを妨げる可能性があることや、コストが高いといった課題もある。

 

・生分解性プラスチックの活用事例:食品包装、農業資材などさまざまな分野で活用され、プラスチックごみ問題を軽減することが期待されている。

注釈

※1 化石資源: 石油や石炭など、地球上に埋まっている有機物由来の資源。

※2 農業用マルチフィルム:農業用の資材で、地温調整や雑草抑制などのために畝の表面を覆うフィルム。

 

 

 

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