1章. バイオプラスチックとは?

バイオプラスチックとは、微生物によって最終的に二酸化炭素と水に完全に分解される「生分解性プラスチック」と、植物などの再生可能な有機資源から製造される「バイオマスプラスチック」の総称です。

生分解性プラスチックについて

生分解性プラスチックは、ある一定の条件を満たす環境下で微生物によって分解され最終的に二酸化炭素と水に完全に分解される特性を持ちます。

しかし、生分解性プラスチックは、特定の環境条件下でのみ効果的に分解されるため、適切な処理施設などが必要になることもあります。

原料としては、植物などの再生可能な有機資源、または化石資源(※1)を使用したものがあります。

生分解性プラスチックの例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などが挙げられます。

バイオマスプラスチックについて

バイオマスプラスチックは、原料として植物、藻類動植物油などの再生可能な有機資源由来の物質を含む、化学的または生物学的に合成されることにより得られるプラスチックです。

なお、原料のすべてがバイオマス由来のものだけでなく、バイオマス由来と化石資源(※1)由来の原料が混合したものもあります。加えて、バイオマスプラスチックは生分解性のものと非生分解性のものがあります。非生分解性のバイオマスプラスチックは耐久性と安定性を備えることから、従来のプラスチック製品と同様の方法でリサイクルすることが可能です。

バイオマスプラスチックの例としては、バイオポリエチレン、バイオポリプロピレン、バイオポリアミドなどがあり、これらは化石由来のものと同等の物性を有します。

 

以上のように、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックは、それぞれ独自の特性を持ち、環境への影響や持続可能性を考える上で重要な違いがあります。

 

2章. バイオプラスチックのメリットと課題

生分解性プラスチック

◆メリット

環境への残留負荷軽減

最終的に二酸化炭素と水に完全に分解されるため、従来のプラスチックに比べてプラスチックごみによる環境への長期的な影響が少ないという特徴があります。例えば、漁具等の水産用生産資材など、意図せずに自然環境へ流出してしまうおそれがある製品を生分解性プラスチック製にした場合、最終的に微生物によって分解されることで、回収せずとも自然環境への長期的な影響を防ぐことができます。

 

廃棄物処理コストの削減

農業用マルチフィルム(※2など、使用後に回収し廃棄処理が必要なプラスチックフィルムを生分解性プラスチック製にした場合、使用後に耕運機で土中へ鋤き込んで、土中で分解させることで、廃棄物処理の手間やコストを削減できます。

◆課題

生分解速度の環境依存性

生分解性プラスチックは特定の条件下でのみ効果的に分解されます。つまり、その条件に適合しない場合、意図した通りに分解されない可能性があります。また、土壌や海水中で分解されるとはいえ、そのプロセスには相応の時間を要し、マイクロプラスチックの発生原因にもなり得ます。

 

リサイクルの難しさ

非生分解性プラスチックに生分解性プラスチックが混入している場合、生分解性プラスチックがマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの妨げとなる場合があります。

バイオマスプラスチック

◆メリット

石油などの枯渇資源の使用量削減

バイオマスプラスチックは、再生可能な資源であるトウモロコシやサトウキビなどの植物や(廃)動植物油等から製造されます。そのため、バイオマスプラスチックの使用により、石油などの枯渇資源の使用量を減らすことができます。

 

二酸化炭素の排出量削減

バイオマスプラスチックの原料である植物に含まれる炭素は、植物が成長過程において取り込む大気中の二酸化炭素(CO2)に由来します。従って、従来の石油などの枯渇資源から製造されるプラスチックの代替としてバイオマスプラスチックを使用することで、製造から最終処分までの二酸化炭素の排出量を削減し、気候変動への影響を抑制することが期待されます。

 

European Bioplastics e.V.によると化石由来のポリエチレン(PE)の年間世界需要を バイオベースのPEに置き換えることで、年間7300万トン以上の二酸化炭素が削減可能とされています。これは、世界の年間2000万便の飛行機の二酸化炭素排出量に相当する削減量です。

 European Bioplastics e.V.:Do bioplastics have a lower carbon footprint than fossil-based plastics? How is this measured?

◆課題

環境への影響

バイオマスプラスチックの多くは自然環境下で分解されないため、従来の石油などの枯渇資源から製造されるプラスチックと同様に、使用後の廃棄処理やリサイクルが重要となります。使用後のプラスチックが適切に回収されない場合、長期にわたって環境に残り、環境汚染の原因となる可能性があります。

 

食料との競合

バイオマスプラスチックの原料の一つとして使用されるトウモロコシやサトウキビなどは、食料としても使用されます。これらをバイオマスプラスチック向けに過剰に使用すると、食料など他の用途との資源獲得競争が生じる可能性があります。従って、常に最適なバランスを考える必要があり、また、食料と競合しないバイオマスの利用を検討していく事も重要です。

生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック共通

◆メリット

新しい市場の開拓 

環境意識の高まりとともに、バイオプラスチック製品に対する需要が増加しています。よって、企業は環境負荷の低減に貢献することで、ブランドイメージを向上させ、新しい市場を開拓するチャンスを得ることができます。

◆課題

コストの問題

バイオプラスチックの原料および製造コストは、従来の石油などの枯渇資源を原料とするプラスチックと比較して高いことがあり、価格競争力に課題があります。

3章. この記事のまとめ

バイオプラスチックの種類と特徴
生分解性プラスチック

特定の環境条件下で微生物によって水と二酸化炭素に分解される。

原料には化石資源(※1)とバイオマスの両方がある。

イオマスプラスチック

バイオマス原料から製造され、生分解性のものと非生分解性のものがある。

環境へのメリットと課題
生分解性プラスチック

メリットは回収し処分することが不要なこと。一方で、特定の環境条件を満たさないと分解が進行しないことが課題。また、リサイクルの手法が確立されておらず、リサイクル可能な非生分解性プラスチックに混入した場合、そのリサイクルを妨げる可能性がある。

バイオマスプラスチック

持続可能な原料を使用することで、枯渇資源である化石資源(※1)の使用量削減と二酸化炭素の排出量の削減に貢献することがメリット。しかし、一部の原料は食料と競合する可能性があることが課題。

注釈

※1 化石資源: 石油や石炭など、地球上に埋まっている有機物由来の資源。

※2 農業用マルチフィルム:農業用の資材で、地温調整や雑草抑制などのために畝の表面を覆うフィルム。

 

記事をもっとよく理解するための情報

この記事を通じて、バイオプラスチックの採用が企業にとって持続可能性への貢献だけでなく、新たな市場機会をもたらすことが理解できたかと思います。コスト等の課題はありますが、技術革新により解決への道が模索されています。

 

特に、バイオマスプラスチックは、令和元年5月に策定された「プラスチック資源循環戦略」において、2030年までに、バイオマスプラスチックの最大限(約200万トン)導入を目指すことが掲げられています。
バイオマスプラスチックの導入は、環境問題に対する効果的な対策の一つとして、今後も注目されるでしょう。

 

住友化学はバイオマスプラスチックの一つであるバイオエタノールを原料としたポリエチレンやポリプロピレンの事業化検討を進めています。

詳細情報は、以下関連サイトをご参照ください。

 

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【プロジェクト詳細】

エタノール由来ポリオレフィン

 

 

【プロジェクトストーリー】

エタノール由来ポリオレフィン

【ニュースリリース】

環境に配慮したエタノール由来ポリオレフィン製造に向けたエチレンの試験製造設備が完成

 

【ニュースリリース】

エタノールからプロピレンを直接製造する環境に配慮した新プロセスの確立へ

 

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2024年5月作成