1. 用語の概要

プラスチックの「マテリアルリサイクル(※)」とは、廃プラスチックを化学構造の変化を伴わない形で製品素材として効率的に再利用するプロセスや取り組みを指します。

これはプラスチックの「ケミカルリサイクル」、すなわち化学反応によって廃棄物を新たな化学製品に再生するプロセスとは異なります。

 

(※)国際規格ISO(15270)ではメカニカルリサイクルと称する。

 

2. マテリアルリサイクルのプロセス

1.回収

使用済み製品からリサイクルの対象となるプラスチック素材を中心に収集します。

2.分別

回収したプラスチック素材を選別、洗浄することにより不純物や汚れを取り除きます。

3.再生

分別後の回収プラスチック素材を溶融、成型加工して製品に再生します。

この中でも回収された素材をより高付加価値製品に再生することを「アップサイクリング(レベルアップマテリアルリサイクル)」と呼びます。

一方、回収された素材をより低品質の素材として再利用することを「ダウンサイクリング(ダウンマテリアルリサイクル)」、使用済み製品から回収された素材を同じ製品に再生することを「水平リサイクル」と呼びます。

 

3. マテリアルリサイクルの利点

1.資源の有効活用

廃プラスチックを素材のまま成型加工するだけで再製品化するため、新たに資源を採取して素材を生産する場合に比べて、資源の消費量およびGHG排出量を削減できます。

2.廃棄物削減

通常焼却処分や埋め立て処分される廃プラスチックを原料として活用することで廃棄物の量を削減します。

3.エネルギーの節約

一般的に、プロセス温度が高い化学プロセスを必要とするケミカルリサイクルに比べ、マテリアルリサイクルでは比較的低いプロセス温度で再生できることから、エネルギーの消費量を低減できます。

 

4. マテリアルリサイクルの課題

1.回収と選別

プラスチックの種類や用途によっては適切な回収と選別が難しい場合があり、効果的なリサイクルを妨げることがあります。また、除去しきれなかった不純物が混入してプラスチック素材本来の特性を妨げる場合もあります。

2.品質維持

リサイクルの過程で、プラスチックを再度加熱、溶融するため、何度もリサイクルするとプラスチックの品質が劣化する場合もあります。

3.設備投資

マテリアルリサイクルの選別・洗浄工程において専用の技術と設備が必要です。これらを整備するためには設備投資が必要になります。

 

5. マテリアルリサイクルを活用した事例

1.ペットボトル再生

使用済みのペットボトルは集められ、洗浄および再加工され、新しいペットボトルや繊維製品に再生されています。

2.家電リサイクル

使用済みの家電製品からプラスチック素材などが種類別に回収されて、新しい家電製品のプラスチック部材として再使用されています。

3.自動車由来プラスチックの再生

使用済みの自動車から得られる廃プラスチックを回収して、高度な選別や異物除去を行い、再度、自動車部品用のプラスチックに再生する技術の開発が進められています。

 

・マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックを回収・分別して化学構造の変化を伴わない形で効率的に製品素材として再利用するプロセスや取り組み。

・利点は、資源の有効活用、廃棄物の削減、エネルギーの節約といった点で、環境負荷低減に貢献できる点。

・事例として、ペットボトル、家電由来プラスチック、自動車由来プラスチックのマテリアルリサイクルなどの導入や技術開発が進められている。