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LCA(Life Cycle Assessmentの略)は、製品を作る時の全てのライフサイクルにおける環境負荷を定量的に評価する手法です。ISO14040及び14044では、以下のように定義されています。
『LCAとは、製品システムのライフサイクルの全体を通したインプット、アウトプット及び潜在的な環境影響のまとめ、並びに評価』
つまり、「原料採取から、輸送、材料の加工、製品の製造、販売、流通、使用、保守サービス、廃棄」、または「製品の再利用(リサイクル)」といった製品のライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスや廃棄物などの環境負荷を数値化し、環境への影響を評価する仕組みです。
一方で、カーボンフットプリント(CFP、Carbon Footprint of Products)は、評価対象をGHG(温室効果ガス)の排出量に限定しており、環境への影響評価も地球温暖化のみが対象です。
主な違いを簡単に表にまとめると以下のようになります。
1992年にリオデジャネイロで開催された地球環境サミットを契機として、国際規格の検討がスタートしました。
その後、LCAやCFPに関する国際規格が次々と制定されました。
以下に主要な国際規格とその内容を説明します。
LCAの歴史は、1960年代の環境意識の高まりと共に始まりました。
米国コカ・コーラ社が実施したリターナブル瓶や飲料缶の環境影響評価は、世界で1番初めにLCAを実施した事例と言われています。
米国コカ・コーラ社は、1969年に飲料用パッケージに関する環境影響比較評価を行い、
回収・洗浄すれば再利用できるガラスリターナブル瓶と、当時はリサイクルが困難であった缶を比較し、使用される原材料と燃料、及び製造プロセスの環境への影響を定量化しました。その後、新しいパッケージの形態として誕生したペットボトルの環境影響も行い、その結果に基づいてペットボトルへの移行を進めてきました。
この環境影響比較評価により、材料と使用エネルギーの関係、及びその結果から生じる環境影響を定量化・可視化することができることがわかり、LCAに様々な企業が取組むきっかけとなりました。
その後米国では、米国環境保護庁(EPA)によって、化学物質及びその他の環境影響を明らかにする評価ツール「TRACI(Tool for the Reduction and Assessment of Chemical and other Environmental Impacts)」が開発され、LCIA(Life Cycle Impact Assessment:ライフサイクル影響評価、LCAの枠組みの一つ)を実施するツールとして多くのユーザーが活用しております。
欧州では1985年に当時のEC環境委員会が「液体容器政令 EC 85/339」を発令し、容器に関する資源とエネルギー利用監視が義務付けられ、加盟各国企業のLCA分野への関心が高まりました。
その後、1991年にはSETAC(環境毒性学及び環境化学に関する国際学会)やオランダのライデン大学によってLCAの実施手法やマニュアルが整備されるなどLCAの普及促進への取組みが活発化してきました。
そして、LCAに関する国際的な統一基準の必要性も認識されることとなり、1993年以降、国際標準化機構(ISO)による規格化検討が開始され、前述の通りに制定されるに至りました。
インベントリデータの収集や標準的影響評価手法の提示等を目的に、1998年度から通商産業省(当時)主導で「製品等ライフサイクル環境影響評価技術開発」が開始されました。本活動には産官学、工業会が参画することで、LCA手法の改善・整備が進みました。また、1995年にはLCAに関わる産業界、学界、国立(公立)研究機関が集うプラットフォームとして日本LCAフォーラム(JLCA)が設立されました。その後、2021年に日本LCA学会、2023年には東京大学に未来戦略LCA連携研究機構(UTLCA)も設立され、LCAに関する調査・研究活動、情報交流促進活動、啓発・普及活動が推進されています。
LCAは、環境負荷物質(GHGなど)の排出量やエネルギー消費量を集計し、地球温暖化や酸性化などを数値化して、その環境影響を客観的に解釈します。そのため、以下の4つの項目からLCAは構成されています。
LCAを実施する目的と対象となる事業や製品など調査範囲を明確にします。
インベントリ分析(LCI)では、製品のライフサイクルに関係する各プロセス(例:製造、輸送など)から大気に放出されるガスや工場外に排出される廃棄物の量を全て定量化します。その後、収集したデータをもとに、各プロセスにおける環境負荷(例:GHGの排出量など)を計算します。
環境影響評価(LCIA)では、製品ライフサイクルが環境に与える影響を定量的に評価します。具体的には、オゾン層破壊、地球温暖化、海の酸性化、大気汚染、砂漠化、資源枯渇など、さまざまなカテゴリーがありますので、LCAの目的に合わせてテーマの絞り込みを実施し、目的に合わせた影響評価を進めます。
解釈の段階では、設定した目的に照らして、項目2のインベントリ分析の結果や項目3の影響解析をもとに以下の事項を明らかにします。
1)製品ライフサイクルの中で重要なプロセスを特定
2)LCAの収集データとその評価結果を再確認
3) 上述の結果をもとに、LCA評価依頼者へ結果の提供及び提言実施
算定されたLCAの結果は、目的に応じて内部や外部の専門家によるレビューを受けて、信頼性を確保することが望ましいとされています。クリティカルレビューでは、製品やサービスの環境影響評価が国際標準規格(ISO14044およびISO14067)に準拠して実施されているか、第三者が客観的に検証し評価します。第三者によるレビューを実施することで、LCAの手法、データ、評価結果、解釈に信頼性を担保することが出来ます。
① LCAの概要
LCAは、製品のライフサイクル全体(原料採取から廃棄まで、Cradle-to-Grave)における、あらゆる環境負荷を定量的に評価する手法です。似た用語としてCFPが有りますが、こちらは地球温暖化に影響を及ぼすGHG排出量のみを評価する手法です。素材産業の場合、いずれの手法も原料採取から出荷までの段階(Cradle-to-Gate)を算定することが一般的です。
② LCAの歴史
米国では、コカ・コーラ社が1969年にリターナブル瓶と缶の環境影響評価を実施し、これがLCAの初事例とされています。これによりLCA普及の契機となり、欧州でも様々な大学や研究機関などがLCA手法の整備を進め、1993年以降は国際標準化の取組みも開始され、2006年に規格として制定されることに至りました。
日本では1998年度に開始された通産省主導の国家プロジェクトによりLCA手法の改良・整備が進みました。また、LCAに関わる産業界、学界、国立(公立)研究機関が集うプラットフォームとして日本LCAフォーラム(JLCA)、2021年に日本LCA学会などが設立され、LCAの調査・研究、普及活動などが実施されています。
③ LCAの進め方とクリティカルレビュー
LCAは4ステップで行われます:
I. 目的・範囲の決定
II. インベントリ分析(各プロセスの環境負荷を定量化)
III. 影響評価(環境影響を明確化)
IV. 解釈(重要プロセスの特定、データ再確認、提言実施)
またLCAは目的に応じて内部や外部の専門家による検証(クリティカルレビュー)を受けることで、LCAの手法、データや評価結果の信頼性が高まり、対外的に宣言できるなどのメリットがあります。