1章. バイオプラスチックとは?

ここでは、バイオプラスチックの基本的な定義と環境へのメリットを掘り下げてみましょう。

1.1バイオプラスチックの特徴

バイオプラスチックとは、微生物によって最終的に二酸化炭素と水に完全に分解される「生分解性プラスチック」と、植物などの再生可能な有機資源を原料とする「バイオマスプラスチック」の総称です。
生分解性プラスチックは、微生物によって分解され、最終的に水と二酸化炭素に分解される特性を持ちます。しかし、生分解性プラスチックは、特定の条件下でのみ効果的に分解されるため、その条件に適合しない場合、意図した通りに分解されない可能性があります。
バイオマスプラスチックは、植物などの再生可能な有機資源由来の物質を原料とし、化学的または生物学的に合成されるプラスチックです。バイオマスプラスチックにもポリ乳酸のように生分解性を有するプラスチックもあります。また、バイオポリエチレンといった非生分解性のバイオマスプラスチックは、従来のプラスチック製品と同様の方法でリサイクルすることが可能です。

1.2 環境負荷の低減効果

バイオプラスチックの多くは、生物由来の原料(バイオマス 例:トウモロコシ、サトウキビ、(廃)動植物油)から作られるため、化石資源から製造される従来のプラスチックの代替として使用することで、化石資源の使用を減少させ、製造から最終処分までの二酸化炭素排出量の削減などに寄与します。

 

詳細はコラム「3つのステップで理解するバイオプラスチック」第2章をご参照ください。

 

これらの特性により、バイオマスから作られるバイオプラスチックは、環境への負荷を低減する有力な選択肢として注目されています。
ここからは、特にバイオマスプラスチックに焦点を当て、消費者の関心や企業による導入目的、PR方法を掘り下げていきます。

2章. 環境配慮型製品への消費者の関心

「消費者は、環境問題にどの程度関心を持っているのでしょうか?」この問いかけは、バイオマスプラスチックに対する消費者の関心を探る上で重要なテーマです。

2.1 環境保護への意識の高まり

多くの消費者は、環境問題への対応として、環境負荷が少ない商品を選ぶことで、環境保護活動への積極的な役割を果たすことができると感じています。また、それが購買行動に反映されています。

 

具体例①:

2024年1月に実施されたボストンコンサルティンググループの15~69歳の日本の消費者意識調査によると、全ての世代で環境負荷の少ない商品への購買意欲が高く、「環境負荷の少ない商品を選択したい」とする声が6割を超えました。特に10代の世代が最も高く意欲を持っていることがわかり、環境負荷の少ない商品を選択している人の半数が、その理由を「最近の暑さ/寒さなど気象の変化を感じるから」と回答しています。一方で、「どの商品が環境負荷の少ない商品なのか、よくわからない(情報不足)」が、具体的な購買に踏み出せていない理由のトップでした。

 ボストンコンサルティンググループ:サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果

 
具体例②:

消費者庁が実施した「令和5年度第3回消費生活意識調査」では、エシカル消費(倫理的消費)(※1)に取り組む理由について、「同じようなものを購入するなら環境や社会に貢献できるものを選びたい」と回答した人の割合が最も高く、「環境問題や社会問題を解決したい」と回答した人の割合も上位となっており、環境問題への対応により消費者の支持を獲得できる可能性を示しています。

 消費者庁:消費生活意識調査

 

以上の事例から、企業による環境負荷の少ない商品の提供は、消費者にとって重要な評価ポイントであることが分かります。バイオマスプラスチックのような環境への負荷が低く持続可能な素材を採用することで、企業は消費者の信頼を得やすくなり、このことが商品の購買決定に大きく影響すると期待されます。

 

 

3章. 企業によるバイオマスプラスチック導入目的

本章では、バイオマスプラスチックを導入した企業の導入経緯や目的について記します。

3.1 持続可能な社会への貢献

多くの企業は持続可能な未来への貢献を目的として、プラスチック製包材や製品の原料を環境配慮型素材(バイオプラスチック、リサイクル素材、紙)に変換することをKPIとして掲げ、取り組みを進めています。
さまざまな環境配慮型素材の中でも、非生分解性のバイオマスプラスチックは、その原料は環境に配慮したバイオマスですが、物性は従来の石油由来プラスチックと同等であることから、新たに包材や部品の設計をやり直すことなく、これまでと同様に使用することができます。したがって、バイオポリエチレンやバイオポリプロピレンなど、非生分解性のバイオマスプラスチックの導入は、企業が短期にKPIを達成するための手段の有力な候補となりえます。

 

具体例①:

小売りグループであるセブン&アイグループでは、2050年までに環境配慮型素材使用率100%、2030年までに環境配慮型素材使用率50%を目標の一つとして取り組みを進めています。具体的には、セブンイレブンでは、植物由来(バイオマス)の素材を30%配合したスプーンやフォークなどの環境配慮型カトラリーを導入したり、(2022年4月より導入開始)、お客さまに提供するレジ袋はバイオマス素材が30%配合された環境配慮型の袋のみを推奨するなどの取り組みをしています。

 株式会社セブン-イレブン・ジャパン:セブン-イレブンが目指す環境配慮循環型社会

 株式会社セブン-イレブン・ジャパン:石油由来プラスチックの削減

 

具体例②:

生活用品メーカーであるライオンでは、2030年までに製品および容器に使用するプラスチック資源量における石油由来プラスチック使用率を70%以下にすることを目標に、再生プラスチック・バイオマス材料の活用拡大などを進めています。具体的には、一部のハンドソープや液体衣料用洗剤の詰め替えフィルムなどへのバイオマスプラスチック(植物由来のバイオポリエチレン)を活用しています。

 ライオン株式会社:ライオングループ プラスチック環境宣言

 ライオン株式会社:資源循環

3.2 新たなビジネスチャンスの獲得

消費者による環境負荷の少ない商品への関心の高まりを受け、企業の環境対応への積極的な姿勢をアピールし、企業ブランドイメージを向上させることを目的として、バイオマスプラスチックなどの環境配慮型素材の採用を進めています。企業ブランドイメージの向上の結果、新たなビジネスチャンスを獲得することが期待されています。

 

具体例①:

時計メーカーであるカシオ計算機は、ケースとウレタンバンド、樹脂の裏蓋にトウゴマの種やトウモロコシから抽出した成分を含むバイオマスプラスチックを採用したアウトドアウオッチを新たなモデルとして販売し、特設WEBページで紹介することで、化石資源に代表される枯渇性資源の使用量削減や二酸化炭素排出量の削減をアピールしています。

 カシオ計算機株式会社:バイオマスプラスチック

 カシオ計算機株式会社:バイオマスプラスチックを採用した“PRO TREK”

 

具体例②:

衛生用紙メーカーである王子ネピアは、バイオマス不織布を使用した新たな製品「ネピア ネピ eco バイオマスマスク」を発表し、製品のパッケージに「植物由来の素材を80%使用したマスク」と表示することで、環境負荷の低減や二酸化炭素排出量の削減をアピールしています。

 王子ネピア株式会社:植物由来の素材を80%使用した「ネピア ネピ eco バイオマスマスク」新発売

 王子ネピア株式会社:バイオマスについて

 

 

 

4章. バイオマスプラスチック製品の効果的なPR方法の紹介

バイオマスプラスチックを使用した製品の効果なPR方法を、具体的な事例を交えて3点紹介します。

4.1認証マークの表示

国内においては、日本バイオプラスチック協会(JBPA)のバイオマスプラマーク(BP マーク)、一般社団法人日本有機資源協会(JORA)のバイオマスマーク、公益財団法人日本環境協会のエコマークの使用が広がっています。これらの第三者認証を取得することで、それぞれのマークを商品に表示できるようになります。例えば、食品包材や日用品包材の消費者の目の付きやすいところに「植物由来バイオマスプラスチックの使用を示すマーク」を表示したパッケージデザインに変更することで、製品と製造企業の環境への配慮を明示できます。

 

具体例:

日本生活協同組合連合会は、再生プラスチックや植物由来プラスチックを容器包材材料に使用したコーヒーや洗剤や、マスバランス方式(※2)を適用したバイオマス割り当てプラスチックを包装材料に使用した味付けのりなどを発売しました。これらの容器包装には公益財団法人日本環境協会が認定するエコマークがラベルとして表示され、消費者に環境への配慮を分かりやすくアピールしています。

 日本生活協同組合連合会:「植物由来プラスチック」「再生プラスチック」包材を使用したエコマーク付き商品(コーヒー・洗剤)を発売

 日本生活協同組合連合会:「CO・OP 味付のり」包材がバイオマス割当プラスチック使用で初のエコマーク認定を取得

4.2WEBメディアを活用した情報発信

WEBメディアを活用して、バイオマスプラスチック製品のメリットを積極的に発信することも有効です。例えば、企業がサステナブルな原材料としてバイオマスプラスチックを使用した製品やその背景にあるストーリーを共有することで、消費者の関心を喚起することができます。

 

具体例①:

アウトドア用品などの製造販売を手掛けるパタゴニアは、WEBメディアで、バイオマスプラスチックを使用したアウトドア製品や環境へのさまざまな取り組みを紹介しており、同社製品のサステナブルな側面を強調することで、消費者の環境意識を高め、サステナブルな当該商品の購入を選択することを促しています。

 パタゴニア・インターナショナル・インク日本支社:フットプリント

 

具体例②:

プラスチック製の組み立てブロック玩具などを製造販売するLEGOでは、WEBメディアで、既存の製品と同等の品質と安全性をもつ98%バイオマス由来のバイオマスプラスチックを使用したブロック玩具の販売を紹介しており、「2030年までにすべての主力製品とパッケージにサステナブルな素材を使用する」という同社の目標の一歩であることをアピールしています。

 LEGO:Story: Plants from Plants

4.3 エコイベントへの出展

環境に配慮した商品に関するイベントに出展し、バイオマスプラスチックを使った製品のコンセプトや環境価値を紹介することも効果的です。例えば、エコイベントなどに出展し、バイオマスプラスチックを用いた製品の展示や体験ブースを設置することで、直接的な体験を通じて顧客や消費者の理解を深めることができます。

 

具体例:

RX Japanが主催する国際サステナブルグッズ EXPO展はエコ・エシカル・オーガニック・フェアトレードを特徴とする環境に配慮したサステナブル製品や素材が展示される大規模なイベントです。環境意識の高い顧客とのマッチングの場として、さまざまな企業が活用しております。

 RX Japan株式会社:国際サステナブルグッズ EXPO【春】

5章. この記事のまとめ

•    消費者の関心:多くの消費者は、環境負荷が少ない商品を選ぶことで、環境保護活動へ積極的に携われていると感じており、それが購買行動に反映されている。


•    企業による導入目的:持続可能な社会実現への貢献や新たなビジネスチャンス獲得などを目的に導入している。


•    効果的なPR方法:商品への第三者認証マークの表示、WEBメディアを通じた情報発信、エコイベントへの出展などが有効である。

注釈

※1エシカル消費(倫理的消費):地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のこと。例えば、売上金の一部が寄付につながる商品の購入や地産地消、二酸化炭素削減の工夫をしている商品の購入などを指す。


※2マスバランス方式:ある特性をもった原料(例:バイオマス原料やリサイクル原料)とそうでない原料が混合される場合に、特性を持つ原料の投入量に応じて、生産する製品の一部にその特性を割り当てる方式。詳細はリンク先参照。

 

 

バイオマスプラスチックの導入検討をするための情報

バイオマスプラスチックの採用は、企業が環境への配慮を社内外に示す重要なステップです。消費者の関心を踏まえたPR方法を通じて、これらの製品の認知度を高めることができます。
これにより、企業のブランド価値の向上と持続可能な消費行動を促進する効果が期待されます。


住友化学はバイオマスプラスチックの一つである、バイオエタノールを原料としたポリエチレンやポリプロピレンの事業化検討を進めています。詳細情報は、以下関連サイトをご参照ください。

 

【関連サイトリンク】

 

【プロジェクト詳細】

エタノール由来ポリオレフィン

【ニュースリリース】

環境に配慮したエタノール由来ポリオレフィン製造に向けたエチレンの試験製造設備が完成

 

 

【プロジェクトストーリー】

エタノール由来ポリオレフィン

 

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2024年6月作成